作者名:アレクサンドル・ベリャーエフ 創元SF文庫
パリのケルン教授の助手に雇われたマリイは、実験室内の恐ろしい秘密を目の当たりにする。人間の首──それも胴体から切り離された生首が、瞬きしながらじっとこちらを見つめているではないか! それはつい最近死亡した、高名な外科医ドウエル教授の首だった。おりしもパリ市内では不可解な事件が続発していた……。“ロシアのジュール・ヴェルヌ”と呼ばれる著者の傑作長編。
強烈なインパクトの名作が復刊!
「首実験」の、恐ろしく悲しい結末とは…?
嫌すぎる設定度:★★★★★
父を亡くしても、病弱な母をささえながら働き、
必死に努力して医者になった、誠実な女性マリイ・ローラン。
母と二人でつましく暮らしている彼女が、助手の仕事を求めて赴いた、
ケルン教授の屋敷で、とんでもないものを見てしまうシーンから始まります。
マリイが見たもの…それは、
なんと先ごろ亡くなった有名な外科医・ドウエル教授の生きている首!
2人の教授は、ドウエル教授がメインで、
首だけの状態で、動物を生かす実験を行っていたのですが、
ある日、ドウエル教授が、突然の発作で死亡したのち、
ケルンが彼を、首だけで蘇生させてしまったのです。
…こんなかたちで、生き延びたくないわ~!
まれにみる、嫌すぎる設定で、物語はスタート。
実験室には、その後、不慮の死を遂げた2人の若い男女が、運ばれてきます。
結果、3人の人間が、生きている首状態に!ひいい…。
しかし、本当の悪夢は、ここから始まるのです。
マリイは、世話をするうちに、ドウエル教授と、意思疎通ができるようになり、
恐ろしい秘密を知ることに。
ドウエル教授のために、できることをしてあげたいと思う彼女でしたが、
研究室には、つぎつぎ予想外の事態が襲い掛かります。
ケルン教授、3体の首、マリイ。
彼らに待っている運命とは…怖いもの見たさで止まりませんでした。
3人の悲劇度:★★★★
自分の研究と生活を奪われた、ドウエル教授。
事故で死亡したことにより、稼いで故郷に帰り、結婚する夢を絶たれた男性、トマ。
バーの歌手で、いざこざの流れ弾に当たり死んでしまった女性、ブリーケ。
3人とも気の毒ですが、いちばんとんでもない目に合うのは、ブリーケ。
彼女は、なんと、新しい身体を手術でくっつけてもらい、完全に蘇生するのです!
しかし、蘇ってめでたしめでたしでは終わらず、
彼女の起こす行動で、物語は予想外の方向へ動きます。
関わった人々も、苦しい目にあうことに。
恐ろしい実験が、みんなの人生を狂わせていきます。
もう、悪いことが起きる予感でいっぱいで、心臓に悪い!
夢に見ちゃいそう度:★★★
あまりにも、ごめんこうむりたい状況で、「ひい~」と思いながら読んでいました。
怖いもの見たさと、恐ろしい展開が、ぐいぐい読者をひき込んできます。
表紙の首も、リアルすぎる…夢に出てきそうだ…。
1937年の作品だそうですが、今読んでもインパクト大です。
マッド・サイエンティストの、利己心虚栄心に巻き込まれた人間の、
背筋が凍るSFサスペンス!
実験に関わった人々の、悲しい運命も相まって、
300ページに満たない作品ですが、強く印象に残りました。
怖いけど、深夜に一気読みがいいかも…。
刺激的なSF小説が読みたい人に、おすすめです。