作者名:北林 一光 角川文庫
長野県安曇野。半年前に山で行方不明となった妻の頭蓋骨が見つかった。三井周平は悲嘆に暮れながらも、遭難場所から遠く離れた場所で発見されたことに疑問を持つ。あれほど用心深かった妻に何があったのか?数週間後、沢で写真を撮っていた女子大生が行方不明に。捜索を行う周平たちをあざ笑うかのように第三の事件が起こる。山には、一体何が潜んでいるのか!?稀有の才能が遺した、超一級のパニック・エンタテインメント。第12回松本清張賞最終候補作。
「あれ」は、こんなに恐ろしい存在だったのか…。
どうしようもなく追いつめられる人間たちの、決死の戦い!
一級のサスペンス度:★★★★★
主人公は、夫婦ともに遅めな結婚をし、
東京から長野の山間部に移り住んできた男性・周平。
知的で、穏やかな中年男性です。
しかし、夫婦で静かに幸せに暮らしていたのに、
最愛の妻が、山で突如行方不明になり、半年後に骨が見つかりました。
慎重な妻に、一体何があったのか。
しかも、事件はこれだけでは終わらず、さらに行方不明者が出たのです。
周平と、農学部野生動物研究会の助手・凛子は、
山で起きている異変の正体を知ろうと、独自に調査。
その後も起きる事件で、ついに‟山に何がいるのか”が明らかになるのですが、
これは予想できなかったー!
正体が分かったあとは、怒涛の展開。
うわ、うわ、うわ~…となる恐ろしい対決。怖い怖い怖い!
なぜこんな事態になってしまったのか、という謎の真相も、
よく考えられていて面白いです!
魅力的な登場人物、無駄なく詰め込まれた内容と、緊迫の戦い、
徐々に緊張感が増していく構成、予想外かつ説得力のある恐ろしい真相。
超一級のエンタメパニック小説という紹介文も納得で、夢中で読んでしまいました。
こんな小説とは思わなかった度:★★★★
山に入った人が、つぎつぎ行方不明になる小説と紹介されていたので、
未知の生命体とか、そういう系の話かな?と思って読み進めたら、
意外な展開でした。
ウイルス?新種?猛獣?宇宙生命体?殺人鬼?
…この中に答えはあるのかないのか、ぜひ、確かめてみてください。
いずれにしても、「えっ怖い…」と、生々しい惨劇シーンに、戦慄せざるを得ません…。
その後の謎の真相が、全くありえなくはない話に思えて、また怖い!
とにかく、「山に入った人間が死んでしまう小説らしい」くらいの認識で読み始め、
おお~!と驚いてほしいです。
人間なんて…度:★★★
人間には、銃をはじめとして色々な武器があって、
大人数でかかれば、たいていは何とかなる、という考えがちょっとはありますよね。
…浅はかだったかも!と思いなおす小説です。
予想以上の危機に見舞われた人間なんて…(泣)
前半は、不気味な‟山にいる何か”に怯え、ひたすら胸騒ぎがし、
後半は、人々のパニックと、何とか対処しようとする人間の命がけの戦いに、
ハラハラしっぱなしです!
角川文庫から出版されている、山を舞台にした2作目「サイレント・ブラッド」も読みましたが、
こちらは父の過去の謎を解こうとするサスペンス・ミステリとなっていて、
だいぶ印象が異なる作品でした。
個人的には「ファントム・ピークス」が好きですが、こちらもなかなかの読み応えです。
3作目「シャッター・マウンテン」は未読ですが、これも面白そう。
ただ、作者さんが亡くなられているんですな(泣)
「ファントム・ピークス」を読み返すたびに、悲しい~。
山歩きには、くれぐれも注意しましょう…。
山での未曽有の危機を、臨場感たっぷりで描いた傑作です!