作者名:ミネット・ウォルターズ 創元推理文庫
母と妹を切り刻み、それをまた人間の形に並べて、台所に血まみれの抽象画を描いた女。彼女には当初から謎がつきまとった。凶悪な犯行にも拘らず、精神鑑定の結果は正常。しかも罪を認めて一切の弁護を拒んでいる。わだかまる違和感は、いま疑惑の花を咲かせた……本当に彼女なのか?
アメリカ探偵作家クラブ(MWA)のエドガー賞長篇賞、マカヴィティ賞長篇賞受賞。
緻密なサスペンス!
女性が果敢に謎に挑むミステリが好きな人は、ぜひ。
誰を信じればいいのか度:★★★★★
‟彫刻家”の名で知られる殺人鬼・オリーヴ。
彼女の犯行は、何と実の母と妹を殺害し、遺体をバラバラにしたという衝撃的なもの!
しかし、精神鑑定は全く正常という結果に。
主人公のライター・ロザリンドは、彼女の記事を書くために刑務所に会いに行きます。
事件について矛盾を感じ、オリーヴと話すうちに、
彼女はやっていないのではないかと考えるように。
オリーヴも全てをさらけ出しはしないし、弁護士は有罪と決めつけ、
当時の関係者からは、気になる証言が。
事件について調べるほどに、疑わしい事実が判明して、
誰を信じたらいいのか分からなくなります。
中編を読んでみて面白かったので、有名な長編に手を出してみたんですけど、
人間描写が生々しくて、読み応えがありました。
つぎつぎ謎と問題が…度:★★★★
ロザリンド自身も、問題を抱えています。
捜査の途中で知り合う元刑事は、暴力的なトラブルに巻き込まれている様子。
オリーヴの気分にもムラがあり、面会はハラハラ。
オリーヴの迫力が半端ない…。
理知的な顔を見せるかと思えば、ヒステリーを起こして暴れるし、
どれが彼女の本来の顔なのか、読者を混乱させます。
主要人物がみんな不安定だし、事件が事件なので、読んでいてずっと落ち着かない感じ。
しかし、ロザリンドは粘りとおします!
過去を振り切るため、ライターとしての誇りのため、真実のために。
途中、結構な目に合っていますが(汗)
暴かれる家族の秘密度:★★★
殺人犯として逮捕され、釈明をしなかったオリーヴ。
殺害された、美しくみんなに好かれていた妹。
冷ややかで冷静だったという、同じく殺された母親。
妻と不仲だったという、父親。
この家族の真実の姿とは?事件当日の真相とは?
隠された事実が、丁寧に明かされていきます。
つい自らの保身を考えてしまう人間の醜さが、胸にささりました…。
重厚で上質なミステリが読みたい人に、おすすめです。
ラスト、あなたはどう解釈する?