作者名:エイダン・トル―ヘン ハヤカワ文庫NV
ドラッグ・ディーラーのジャック・プライスの下の階に住む老女が殺された。自分の縄張りで、誰がなぜそんな真似を? 調べ始めたプライスだが、それを快く思わない何者かによって、凄腕暗殺者集団〈セヴン・デーモンズ〉を差し向けられる。冷酷かつ用意周到に彼の命を狙ってくる暗殺者たちと、減らず口で常軌を逸した手を繰り出すプライスとの壮絶な殺し合いの結末は? 型破りなノンストップ・サスペンス登場!
上品さなんて期待しちゃダメ!
何じゃこりゃ⁉感を楽しむ、アクションサスペンスです。
人でなしアクション度:★★★
人々や町を堕落させすぎることなく、スマートにドラッグを売る男を自称する主人公。
彼、ジャック・プライスがそのまま語っているかのような一人称で物語は進みます。
自分が住んでるマンションで、住民の老女が殺されたのが、大騒動のきっかけ。
自分の縄張りで、把握できない事態が起きたのが不愉快でたまらないジャックは、
探りを入れ始めるのですが、突然襲撃を受けます。
しかもその後ついに、世界的に悪名高い凄腕の暗殺者集団「セヴン・デーモンズ」に狙われることに!
通常の悪党ならば、絶望的な状況で怯えるしかないですが、
ジャックは驚くほどめげない。むしろ冷静に対処。
よくこれだけ追い詰められて、減らず口が叩けるなぁ…なんて思いながら読んでいたら、
とんでもない方法で、逆に暗殺者集団を襲撃!
その方法たるや、あなたがいちばんヤバい!としか言いようがなく、ひくわ~。
いっそ、すがすがしいくらい、人でなしでモラルがない主人公です。
途中から面白くなってきちゃったけど。どっちもどっちだしな…(汗)
やりすぎ主人公度:★★★★★
とにかく、狙われたジャックの、「やられる前にやっちゃえ」感がすごい。
「セヴン・デーモンズ」は、チンピラ程度にしか考えてなかった標的に、
すさまじい攻撃を受ける羽目になります。
まぁ、こっちも人でなしのプロ集団なので、「そうくるなら、やってやるわ」というノリで暴走。
個性的で、おのおのが化け物みたいな暗殺者ばかり。
物語は、謎の集団「ポルターガイスト」や引退した伝説の人殺しや、
凄腕ハッカーや精神病患者まで巻き込んで、世界中を混乱に陥れます。
ジャックの、デーモンズに対する一発目の攻撃からして、何してんの⁉という超エグイ方法。
その後も、どんどん読者をひかせるレベルの、トリッキー攻撃をやりまくります。
第2部では、全世界の○○業界に謝りなさいと言いたくなる、
斬新かつ思わず笑っちゃう襲撃を…作者は普段何を考えているんだろう(笑)
デーモンズの方がひどいですが、けっこう一般人巻き込んでます。
それでもそこまで嫌いになれないのは、たまに情を見せるというか、
全くの冷血漢ではないんだな、と思わせる文章があるから。
まぁ、確実に異常者ではあるんでしょうけど…。
「いっちゃってるアウトロー」と「気の毒な一般人」しか、ほぼ出てこないという、
大迷惑な暴走劇を描く、でもいつの間にかジャック側を応援してしまうという不可解な作品。
結局最後まで読んじゃう度:★★★
この作品、問題は、癖があって読みにくいこと。
ジャックの減らず口で語られ、登場人物たちの会話は「」でくくられていません。
こうしてみようか、と語っていたことが、実際の実行場面につながっていたり、
一文で複数人に語り掛けていたり。
なかなか、すっと頭に入ってこない。
読んでるうちに、これは現在進行中かな?と少し分かるようになってきます。
ジャックも、お世辞にも上品とは言えないので、美しい文章を求める人には向かないかと。
読みにくいし、ジャックはお下品だしで、途中う~んと思ったのですが、
慣れ始めてからは面白く…。
というか、ジャックとデーモンズたちの暴走がエスカレートして笑うしかなくなってくるし、
そもそもなぜ老女が殺されたのか、全然分からないし、
最後にジャックが、どれだけやらかすのかが気になるしで、結局最後まで…。
最後の最後のクライマックスを読んで、
「ああ、何だかんだで面白かったな」「ジャックはやはり嫌いじゃない」と思う作品でした。
読む人を選ぶけれど、確かにアウトロー小説の面白さがあります。
癖がある!型破り!みんな人でなし!
読む人を選ぶけれど、これこそアウトロー小説かも?