作者名:深町 秋生 角川文庫
東京のやくざ組織・東鞘会に所属する兼高昭吾は、弟分の室岡と沖縄に飛び、ターゲットの喜納修三を殺害した。その夜、一人になった兼高は激しく嘔吐する。実は兼高は警視庁組対部に所属する潜入捜査官だったのだ。後継者問題をめぐり、東鞘会では血で血を洗う抗争が続いており、喜納殺害はその一環だった。兼高の最終任務は東鞘会会長である十朱の殺害。十朱は警視庁を揺るがす、ある“秘密”を握っていた。ボディガード役に抜擢された兼高は、身分が明かされた瞬間に死が迫る中、十朱への接近を図るが……。
2017年、最強の問題作といわれた傑作が、今月文庫本で出ました!
来月にはコミックも出るそうで…衝撃作を、一気読みしてみませんか?
設定がやばい度:★★★★★
東京で最大のやくざ東鞘会系神津組の若頭補佐・兼高昭吾。
兼高とコンビを組む、生来のキラーである、室岡秀喜。
この2人が、沖縄である人物を殺害するところから、物語は始まります。
のっけから、すごいインパクト(汗)
さらにとんでもないのが、兼高は本名・出月梧郎といって、警視庁の潜入捜査官であるという事実!
現役の警察官が、顔や名前を変えて、ヤクザに潜入し、
容赦なく殺人を犯しながら、若頭補佐にまで出世しているというのです。
さらにさらに、それはマズいにもほどがあるでしょう!という秘密があって、
「問題作で衝撃作」と単行本の帯に書かれていたのも、大納得。
極道に馴染むほどに苦しむ兼高の心境をよそに、
警視庁・東鞘会・他県のヤクザ・海外の殺し屋などが、おのおのの利を得ようと行動し、
陰謀が絡み合って、事態はどんどん泥沼のバイオレンスに!
この作品の素晴らしいところは、攻めた設定を軸にただただバイオレンスというわけでなく、
極道の男たちの結びつきや、登場人物たちの背景や苦しみ、混乱の仕掛人の思惑といったことが、
しっかりと描かれていることだと思います。
犯罪小説・警察小説として、間違いなく傑作で、
容赦なく殺し、死んでいく、裏社会の男たちの生き方に唖然。
恐ろしいことに、極悪非道な登場人物たちに、魅力を感じちゃうんですよ…。
と、同時に危ないところには絶対に近づかないでおこうと、肝に銘じさせる作品。
手に汗握る度:★★★★★
主人公・兼高と、相棒・室岡のコンビは、組きっての武闘派で、
途中から会長のボディーガードも命じられるので、とにかく戦闘が多いです。
力を失い海外に逃亡していた元ヤクザが、帰国し不穏な動きを見せる中、
今までにないタイプの殺し屋が送り込まれ…組は厳戒態勢に。
ハラハラする状況で、警官としての任務を果たさなくてはならない兼高を見ていると、
ちょっと大丈夫かいな~と気になって気になって、しょうがない!
しかも、正体ばれたら間違いなく殺されますからね…心臓に悪い小説です。
兼高に指示を出す警視庁の上司も、油断ならない曲者で、最後に笑うのは誰なのか…。
というか、修羅場続きすぎて、そもそも誰が生き残れるんですか?というレベル(汗)
ドカーン!というインパクトのある作品を読みたい方、ぜひぜひ。
「果てしなき渇き」や「ショットガン・ロード」も、うわっ…と言いたくなる衝撃作でしたけど、
う~ん、本作がインパクト・面白さともにいちばんかも!
もちろん、上記2作も面白いです。
裏社会の壮絶度:★★★★
とにかく、裏社会の実情が生々しい!
普段は、茶目っ気すら見せる登場人物たちですが、
戦闘シーンに突入した瞬間、暴れる暴れる。
実際に、勢力がぶつかり合うシーン以外でも、
経済ヤクザがどのようにして資金を得ているかとか、すさまじい上下関係の詳細とか、
銃刀法の時代にどういった武器を持っているかとか、わ~おという描写が満載です。
怖いもの見たさで、読むのが止まらない…。
あとは、ヤクザとして生きる男たち特有の、結びつきが熱かったです。
人でなしなんですけど、読んでるうちに、そんなに嫌いじゃないな?となるのが怖い。
いや、現実には絶対関わり合いになりたくないけど(汗)
男たちの絆を目の当たりにし、自らも組長や部下たちから慕われるにつれて、
兼高の苦悩が…読んでるこっちも胸が苦しいくらいです。
「インパクト」「生々しさ」が抜きんでている作品ですが、「切なさ」「熱さ」も相当のもの!
ちなみに、作中に出てくる華岡組や琢真会は「バッド・カンパニー」のシリーズにも出てくるので、
気になるかたはぜひ。こちらは、若干テンション高め。
思いっきりハラハラしたい人に、おすすめ。
とにかく面白い、バイオレンスな傑作!確実に刺激的読書体験になります!