作者名:鈴森 琴 創元推理文庫
死者を蘇らせる術で発展した亀珈王国。名付け師が居を構える霊昇山に、死者の代弁機関、夢無鵡予言院からの使者が訪れ、二十四大鬼の一体に不穏な動きがあり、退魔を要請したいと告げた。そこへ名乗りを挙げたのは、百の御子のひとり、才はあるが病弱な千魘神だった。魘神に同行するのは、牢から放たれ、霊昇山に身を寄せている王族殺しの大罪人・曇龍。果たして大鬼退治は成功するのか?
新キャラが増えて、スケールもアップ!
大罪人と病弱死霊術師のコンビは、大鬼を退治できるのか?
メインは死霊術師度:★★★★
前作では、一般人(?)サイドの主人公が、家庭教師を営む青年・儒艮(じゅごん)。
死霊術師サイドの主人公が、100人の御子唯一の女子・舞蒐(ぶしゅう)。
全体的に、儒艮が主人公という感じでした。
2作目となる本作は、死病に侵された死霊術師で、
しかし無邪気に明るい青年・厭神(えんしん)と、
前作で牢から出た、金髪の異人で女大罪人・曇龍(ウォウロン)。
死霊術師の御子の登場人物が増えて、霊昇山の術師たちの住まいや生活の描写もあり、
善悪どちらサイドか分かりにくい謎の存在だった彼らが、
わりと親しみやすい雰囲気で描かれています。
とくに、厭神の子どもっぽいキャラや、彼を叱る兄たちのシーンは、
とてもコミカルで微笑ましい。
個人的に、いちばん笑えたのが、‟ゆきちゃん”こと阿雪姫の存在。
わたしも、彼女に癒されたいです~、可愛い!
州を収める家の長としての重圧に悩む女性・白芍(びゃくしゃく)の目線も、
ハラハラしつつも、普通の女性視点なので、親しみがわきます。
妖しい美女・繻子蘭(しゅすらん)や、女性が強い部族も登場し、
前作より、女性陣の見せ場が多くて華やかな印象でした。
人と人との絆度:★★★★★
霊昇山の、死霊術師の義兄弟たちの、難しい立場ながら確かに存在する絆。
曇龍の過去の、何とか生き残ろうとした一族の、悲しい愛。
全く違う境遇で生きてきた2人の女性の、淡い友情。
人と人との繋がり、両者の間の感情が、
緊迫した事態のなかでも、しっかりと描かれていました。
そして、物語の終わりには、また新しい絆が…。ここキュンときました。
悲しい過去、苦しい現状から、何とか抜け出そうとあがく登場人物たちを、
応援したくなる続編です!
この世界にも登場人物たちにも、愛着がわくし話は面白くなってくるし、
この2作目でやられた…シリーズを揃えるの決定(笑)
ますます魅力的な世界度:★★★★
前作からの登場人物も、今作からの新キャラクターも、魅力的!
シリーズが続いていくにつれて、好きなキャラの活躍が増えるといいなぁ。
他の大陸や、過去の歴史も、だんだん明かされてきて、
いよいよ壮大な世界観に、びっくりさせられます。
ちなみに、いちばん驚いたのは、いろいろ大変な目に合っているある人物が、
予想以上に、ただ者ではなかったこと…お、恐ろしい子!
というか、抜け目のない人物が多いファンタジーです。
大鬼や龍魚など、巨大な存在も出てきて、圧巻の2作目でした。
3巻目「忘却城~炎龍の宝玉」も読んだのですが、
こちらは再び、儒艮と金魚小僧が大活躍で面白かった!
早く4作目が出ないものかな~。
陰謀と謎解きと駆け引きと…。
死霊術師たちの戦いから、眼を離せなくなる、スケールアップの続編!