作者名:小林 泰三(やすみ) 創元推理文庫
大学院生・井森建は、ここ最近妙な夢をよく見ていた。自分がビルという名前の蜥蜴で、アリスという少女や異様な生き物が存在する不思議の国に棲んでいるというものだ。だがある夜、ビルは緑豊かな山中で、車椅子の美少女クララと“お爺さん”なる男と出会った。夢の中で「向うでも会おう」と告げられた通り、翌朝井森は大学の校門前で“くらら”と出会う。彼女は、何者かに命を狙われていると助けを求めてきた……。夢の“クララ”と現実の“くらら”を巡る冷酷な殺人ゲーム!
今度は、いつもと違う国?
蜥蜴のビル、死なずに頑張れ、今回は!
ビル、相変わらず度:★★★★★
前作「アリス殺し」で活躍した、蜥蜴のビルが、
またしても捜査の手伝いを頑張ろうとします。
現実では利口な大学院生の井森なのに、夢の中ではお間抜けなビル。
今回も、非常に苦労しています(泣)
なにせビルは、会話もなかなか進まないくらいだし…。
でも、憎めないんですよね。
2作目ともなると、お馬鹿さんっぷりも慣れてきて、可愛くなってきた(笑)
今作では、井森も現実で奮闘しますが、悲惨な目に合うのは相変わらず。
ある意味期待を裏切らないというか、彼は彼で、やらかしてくれます。
このシリーズは、あと何作か続くようなので、
もはや、ビルと井森の奮闘と災難を楽しむスタンスで読んでくれようか…。
パズルのようなミステリ度:★★★★
いつもの国じゃないけれど、やはり夢の住民と現実の人物は、リンクしているみたい。
またしても、誰が誰なんだ!という謎解きが必要になります。
今回クライマックスに明かされる、本人と分身の正体は、
ある迷惑な人たちの企みのせいで、ややこしいことに!
順を追って、‟実はこれがこうだから、ここでこんなことに…”
と考えていくと、ああ~っと納得。
意外なリンクも、健在です!
またしても、当てられない!
ちなみに、「アリス殺し」の不思議の国トンデモ捜査コンビよりは話が通じるけれども、
住民たちの、人(?)としてどうなの?感は変わらないです(笑)
嬉しいサービス度:★★★
前作では、他の作品に出てくる刑事さんたちが、出演していました。
今回も、ゲスト出演(?)が。
「大きな森の小さな密室」(ミステリ短編集)に出てくる、手強い2人が活躍します。
読んでいなくても楽しめますが、「クララ殺し」と「大きな森の小さな密室」は、
前後して読むとより楽しめます。
短編によく出る人物が何人かいますが、今後もこのシリーズにやってくるのかな?
今回の2人も、何冊か出ているみたいだし。
キャラが強烈すぎて、ゲスト出演した瞬間、
物語を破壊しそうな人たちがいるけれども(汗)
角川ホラー文庫やハヤカワ文庫、創元推理文庫などからたくさん作品が出ているので、
色々手を出すと、「あ、あのキャラが出てる」となって面白いかもしれません。
2つの世界をまたぐミステリに、またもや驚かされました。
つづくシリーズが、楽しみです!