【ファンタジー】少年アリス|夏の夜に、校舎に忍び込んだ少年2人が遭遇する、不思議な出来事。透明感のある文章と、綺羅綺羅した美しい言葉たち…長野まゆみ作品でしか読めない、魔法のような表現に満ちた、第25回文藝賞受賞作!夏の夜に幻想的な物語をどうぞ!

作者名:長野まゆみ   河出文庫

兄に借りた色鉛筆を教室に忘れてきたアリスは、友人の蜜蜂と犬の耳丸を連れ、夜の学校に忍び込む。誰もいない筈の理科室で不思議な授業を覗き見た彼は、教師に獲えられてしまう……。文藝賞を受賞した群青天鵞絨色のメルヘン。

夜の校舎の冒険と、少年たちの成長を描く、素敵な幻想メルヘン。

物語とともに、言葉の美しさを楽しんでください。

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ワクワクするシチュエーション度:★★★

2人の少年、アリスと蜜蜂が主人公のファンタジー小説。

(この名前からして、私たちの普段の世界とは異なる、素敵な雰囲気…)

夏の月夜に、アリスが創り上げたばかりの石膏の卵を眺めていると、

友人・蜜蜂が、飼い犬の・耳丸とともにやってきます。

兄の色鉛筆を学校に忘れてきてしまったから、一緒に夜の校舎探検に行かないか、

と誘ってきて、物語がスタート。

2人と1匹が夜の学校に忍び込むと、なぜか理科室に明かりがついていて、

覗き込んだ2人は、そこに教師らしき男性と、たくさんの制服を着た少年たちを目撃。

彼らは、こんな夜中に授業を行っているようで…。

見ていたのがばれた時、アリスは逃げ遅れてしまい、

そこからは、幻想的で美しく、少し怖い世界に突入していきます。

この、夜の校舎に忍び込んで、不思議な授業を目撃するというのは、

何ともロマンチックで、ドキドキする展開。

一歩間違えば、ホラーかもしれませんが(汗)

謎の事態についていこうとする、落ち着いた少年であるアリス。

必死でアリスを探す、天真爛漫な少年の蜜蜂。

この2人もそれぞれ魅力的!

ひとりで行動するうちに、普段の自分を省みて成長していくのも、

この作品の見どころの1つです。蜜蜂のお兄さんも魅力的。

これぞ長野まゆみワールド度:★★★★★

「睡蓮の開く音がする月夜だった。」なんて文章で始まっちゃう、素敵小説。

物語は、長野作品らしい、キラキラというより綺羅綺羅と表現したくなる言葉が溢れています。

烏瓜をくりぬいたものに、蛍星(宙に浮く小さな光る石の群れ)をいれて提灯にする…

校庭の映画上映会の思い出は、曹達(ソーダ)水を飲んだこと…

露を含んだ芝草は、柔らかな天鵞絨(ビロード)の絨毯となって…

などなど、なかなか他の作品では見ない文章で描かれ、物語の幻想的な世界観がアップ。

最初に長野作品を読んだときには、漢字の使い方に驚きました。

何だかもっと読みたくなって、他の作品をいくつか読みましたが、

最初に読んだ本作が、幻想性が強いけれどいちばん読みやすいと思いました。短いですし。

もっと、妖しい夢の世界観を味わいたい人には、

こちらも河出文庫出版の「野ばら」がおすすめです。

同じく少年2人がメインでSF要素ありなのが、「テレヴィジョン・シティ」。

角川や文春文庫などからもたくさん出ており、

半端なく妖しい世界のものもあるし、透明感たっぷりのものもありますが、

とにかく、どの作品も、美しい文章で書かれています。

好きな人はとことん好き度:★★★

この表現・文章が、好きになるかどうかですね!

好きな人は、とことん揃えたくなる、そんな作家さんではないのでしょうか。

ものすごい大事件が起きるとか、殺伐とした事態になるとかはなく、

隣り合う異世界に、ふと紛れ込んでしまったかのような、

色々な意味で、夢のような小説。

イラストレーターさんでもあり、自作の表紙も描かれているのですが、これまた素敵。

作品の世界観に、ぴったりで魅力的です。

透明感に満ちた、少年たちの冒険×成長×ファンタジー。

夏の夜に、ソーダ水を飲みながら、読んではいかがですか?

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