作者名:米澤 穂信 創元推理文庫
小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。賢しらに名探偵を気取るなどもってのほか。諦念と儀礼的無関心を心の中で育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を!そんな高校二年生・小鳩君の、この夏の運命を左右するのは“小佐内スイーツセレクション・夏”!?待望のシリーズ第二弾。
板についてきた、小市民的態度。
けれど、この夏の小佐内さんは、驚きのスイーツコンプリート計画を企画していた!
謎とスイーツとただ者ではない2人、再び!
夏休みの2人を楽しむ度:★★★
前作「春期限定いちごタルト事件」では、学校や登下校中の2人の様子が中心に描かれましたが、
今回は、高校2年生になった2人の、夏休みが舞台。
2人の助け合い関係は、知り合いの視線があるところでのみ有効なので、
休み期間中に、わざわざ会ったりは基本しません。
ところが、小佐内さんは夏休み初日に突然小鳩君の家に来て、
この夏は「小佐内スイーツセレクション・夏」を開催、チェックしたお店をまわると宣言。
第1章「シャルロットだけはぼくのもの」でミスを犯した小鳩君は、
彼女の夏の計画にお供する羽目に。
この話、微笑ましくて大好きです。絶品ケーキが、小鳩君を狂わせる…。
第2章「シェイク・ハーフ」では、2人の本性を知る同級生・堂島君が登場。
前作で、その気がないのに謎を提供してしまった彼は、
またしてもわざとでなく謎を提供。紙に残された「半」の文字の意味とは?
第3章「激辛大盛」では、堂島君の夏休みを引っ掻き回す問題が語られますが、
この問題が、第4章「おいで、キャンディーをあげる」で一気に進展!
前作を超える大事件が勃発し、小鳩&堂島コンビは、再び解決のために奔走します。
そして最後の最後に…?
終章「スイート・メモリー」は答え合わせ編。
ここでついに、小佐内スイーツセレクション第1位夏期限定トロピカルパフェがお目見えし、
スイーツ行脚をした甘~い夏休みに、実際何が起きていたのかが明かされます。
何だか夏休みに気合が入っている小佐内さんと、
振り回されるうちに、つい謎を解きたくなる小鳩君の、
忘れられない夏が描かれた本作(あ、堂島くんにとってもか…。)
クスッと笑えて、謎解きあり!美味しそうなケーキあり!の楽しめる続編でした。
スイーツ・スイーツ・スイーツ度:★★★★★
4作目まで出ているシリーズの中で、1・2を争うくらい、
美味しそうなスイーツが、たくさん出てきます。
このスイーツ行脚、甘党にはたまらないであろう…。
小佐内さんのスイーツ談義はもちろん、
小鳩君が感動に打ち震える、絶品ケーキも登場し、タイトルのトロピカルパフェは圧巻!
それに対する、小鳩君の反応が(笑)
前作に増して、読んでいるとスイーツ食べたくなるな…。
しかし、2人の夏の高校生カップルのような微笑ましい行動も、
魅惑のスイーツも霞んでしまうような、大事件が!
ビターな後味も、シリーズ屈指なのです。
案の定甘くない度:★★★★
後半起きる大事件のあと、2人の今後を左右する、大事なシーンが…。
この夏に遭遇したミステリは、米澤青春ミステリあるあるの、
苦みが残る、甘くない展開をもたらします。
古典部シリーズも、苦かったり切なかったりする展開が、けっこうありましたし。
「いちごタルト」同様、とても面白い作品になっているのですが、
今回は、小鳩・小佐内コンビにとって、試練の回でもあるのです。
なかなか緊迫した事件が起きてしまうし、
やはり、この2人は‟狐と狼”…ただ者ではない。
ここまで読んだら、3作目「秋期限定栗きんとん事件」まで読んでほしい!
2人の真価と言っていいほど、面白いので、とにかくおすすめです!
健全な夏休みに勃発したのは、小市民らしからぬ大事件!
小鳩君は謎を解き、小佐内さんを救えるのか?