作者:ムア・ラファティ 創元SF文庫
クローンの体で蘇った6人が最初に目にしたのは、自分たちの他殺体だった――2500人分の冷凍睡眠者と人格データを載せた恒星間移民船で、唯一目覚めていた乗組員6人が全員死亡。蘇った彼らは、地球出発後25年間の記憶を消されていた。しかも船のAIも改竄され、再復活は不可能に。全員が他人に明かせない秘密を抱える彼らは、自分自身さえも疑いつつ、真相を探り始めるが……ヒューゴー賞、ネビュラ賞候補の新鋭SF!
虚空を突き進む恒星間移民船内で起こった惨劇。手がかりとなる記憶も記録もすべて消され、しかも次に死んだら二度と復活できない。自分自身が犯人かもしれない極限状況で、乗組員たちは対立しつつもギリギリの協力を強いられる。やがて明らかになる6人の過去――それはクローン医学と記憶移植を用いた生命延長技術を巡る、数百年に及ぶ人間とクローンの対立の歴史でもあった……。彼らは真相を解き明かすことができるのか?
訳ありの乗組員。人間とクローンの確執。
クローン問題に絡んだミステリが、秀逸です!
始まりのインパクト度:★★★★
目覚めたらクローン再生されていて、
‟前”の自分たちの死体を見つけるところから始まるという、衝撃。
しかも死体4体は明らかに他殺で、自殺疑い1体と、ほとんど昏睡状態の生存者が1名…。
とんでもない事態が起こったことは間違いないのですが、
乗船したあとの25年の記憶が失われていたのです。
この25年の間に何が起きたのか、6人の秘められた過去とは一体?
続きが気になって、どんどん読んでしまいました。
みんながみんな、クローン化を選ぶわけではなく、人間とクローンはお互いにギスギス。
クローンは子どもを作っちゃダメとか、DNAや記憶をいじっちゃダメとか、
いろいろな法律の下に、妥協して共存しているという印象ですね。
そういった未来の根深い問題も描かれています。
絡み合う運命度:★★★★★
殺人も気になるんですけど、
6人の長~いクローン人生(何百年も!)で何があったのか、がとにかく気になります。
みんな、すごい人生送ってるし(汗)
歴史の重要人物だったり、実はすごい技術者だったり、前科があったり。
1人の過去が明かされたあと、2人目が明かされて…
この2人めちゃくちゃ因縁あるじゃないか!本人たち気づいてないけど!
という事態が、つぎつぎ起こるので、読むほどに泥沼に…。
視点が移るたびに、驚きの真相度:★★★★
6人の視点が入れ替わりつつ、物語は進行。
みんな記憶がないのですが、なくす前に何らかの手をうっている人物がいて、
それを見つけた人が、混乱しながらも推理していきます。
読み進めるほどに、あれはこれの伏線だったのか!と興奮しました。
語られた過去、宇宙船に残されていたもの…
それらが収束していくなかで、争いが起き、もうどーなるの!とヒヤヒヤ。
もう再生できませんしね。
6人が欠けることなく、危機を乗り越えられるのか、ぜひ確かめてみては?
どんどん意外な真相が明らかになり、事態は大混乱!
閉鎖空間で起きるミステリが好きな人、おすすめです!