作者名:恩田 陸 幻冬舎文庫
超大型台風接近中の日本。国際空港の入管で突如11人が別室に連行された。時間だけが経過し焦燥する彼ら。大規模な通信障害で機器は使用不能。その中の一人の女が「当局はこの中にテロ首謀者がいると見ている。それを皆さんに見つけ出していただきたい」と言った。女は高性能AIを持つヒューマノイドだった。10人は恐怖に戦おののきながら推理を開始する。
“北米からの帰国者に感染力の高い新型肺炎の疑いが生じる。連行は細菌兵器ゆえの隔離、ヒューマノイド対応だったのか。
テロ集団はなぜ「破壊」でなく「消滅」という用語を使うのか。様々な憶測が渦巻くが依然、首謀者が誰か摑めない。やがて孤絶した空港に近づく高潮の危険。隔離された10人の忍耐と疲労が限界を超え「消滅」が近づいた時、爆発音が!
個性的かつ魅力的な、11人。
彼らと一緒に、謎を解いていきませんか?
恩田さんらしい登場人物度:★★★★★
恩田さんの描く登場人物って、その人の感性とか思い出とかが、細かく描写されていて好きなんです。
感情移入しやすいなぁと。
今回も、個性的だけれど、実際いるかもこういう人、という人物たちが。
日本に帰国した矢先に、空港に閉じ込められた11人。
帰ったら肉ワンタン麺食べたいエンジニア、抜群の推理力の青年、
マイペースな空間プロダクトデザイナー、不審者に間違えられまくる男性、
連絡を取りたがる中年女性、ざっくばらんな医療従事者。
訳ありそうな母と男の子、真面目な豆腐工場経営者、謎の親父。
そして、たまに日本語がおかしいヒューマノイドのキャスリン。
この11人(人は10人か)の推理やいかに!
一緒にいることになった、コーギー犬ちゃんが可愛いです。
語り手となる登場人物が多い点が、恩田さんの「ドミノ」という作品に似てるかな?
あちらは、いろいろなトラブルが東京駅に集結する、スピーディーな作品でしたが、本作はじっくりという感じ。
たくさんの謎が魅力度:★★★
ある問題で世界的に有名になり、亡命を画策している外国人。
飼い主が見つからない、コーギー犬。
集められたメンバーの、共通点。
しきりに連絡を取りたがる、中年女性の事情。
おびえているような母親と、不思議な男の子。
素性がはっきりしない親父。
原因不明の「孤独な肺炎」。
テロ組織の、‟破壊”ではなく‟消滅”という発言。
うーん、謎がいっぱいですね!
登場人物の会話から、真実を当てられるか、挑戦してみては?
意外な結末度:★★★★
閉じ込められた人々。
通信障害と、テロ予告。
迫りくる台風。
何とも不安を煽る状態で、恐ろしい結末に向かうのでは…⁉と不安になります。
結末は、何とも意外。恩田さんらしいというか何というか。
私は、この終わり方は、結構好きですね。
そう遠くない未来で、キャスリンは、人に混じって普通に働いていそうです。
テロ集団の、予想外の目的とは?
特殊な状況下での推理劇が好きな人に、おすすめです。