作者名:アンドレアス・グルーパー 創元推理文庫
酔った元小児科医がマンホールで溺死。市会議員が運転をあやまり事故死。一見無関係な出来事に潜むただならぬ気配に、弁護士エヴェリーンは深入りしていく。一方ライプツィヒ警察の刑事ヴァルターは、病院での少女の不審死を調べていた。オーストリアの弁護士とドイツの刑事の軌跡が出合うとき、事件が恐るべき姿をあらわし始める。ドイツでセンセーションを巻き起こした衝撃作。
悲惨な事故現場には、必ず青いサマードレスの少女がいた?
精神病院で自殺に見せかけて殺された、少年少女の過去とは?
おぞましい罪が新たな事件を招く、衝撃的なドイツミステリ!
繋がりが見えないミステリ度:★★★★
オーストリアの女性弁護士と、ドイツの刑事の、2人を主人公として語られるミステリ。
弁護士・エヴェリーンは、若く美しい女性で、両親はすでになく、
仕事に打ち込みつつも、過去のトラウマの幻影にとらわれています。
元小児科医が、酔ってマンホールに転落し死亡した事故で、
映像をチェックした彼女は、青いミニドレスを着た金髪の華奢な少女に気づきます。
その後、他の事故現場でも、少女が目撃されていることに驚き、
実は殺人事件だったのではないかと、疑いだします。
ある人物が死亡し、上司ともめたことで、
彼女は職務を逸脱してでも、真相を明らかにしようと決意。
そのころ、ドイツの精神病院では、少女が自殺に見せかけて殺されます。
調べると、犠牲者は彼女だけではないと判明。
真相にいち早く気づいた、中年の刑事・ヴァルターは、捜査に信念を燃やします。
国をまたいだ、名声のあった男性の連続事故死と、入院中の少年少女の殺人事件。
繋がりが見えない2つの出来事は、だんだん輪郭が明らかになっていき、
そのおぞましい姿に戦慄!とんでもない真相のミステリでした~。
新事実が明らかになり、どんどん話が繫がっていく書き方がうまい!
繋がりが明らかになるほど、事態は緊迫していき、ハラハラハラハラ…。
後半は、ノンストップでした!
主人公2人を応援したい度:★★★★★
エヴェリーンは、幼いころにある事件に巻き込まれ、
その後は苦労しながら、弁護士になった頑張り屋の女性。
しかし、生い立ちのせいか、人付き合いに臆病で、なかなかうまく生きられない様子。
ただ、飼い猫2匹の名前が、ボニーとクライド。センスが独特(笑)
仕事を手伝ってくれる男性・私立探偵のパトリックに関しても、
読んでるこっちが、もうちょっと深く関わってもいいんじゃな~い?と心配になるくらい!
この事件に携わることで、彼女に訪れる変化に要注目です。
もう一人の主人公で、同じく苦労性の刑事・ヴァルターも魅力的。
妻を亡くしてからは、娘を育てるため、捜査との関わりをセーブしていましたが、
今回の事件で少女が殺されたことで、刑事魂に火が付いたのか、
根性で食らいつく優秀な捜査官っぷりを発揮し、大活躍!
捜査のためのルール違反は犯しつつも、人として大切なことは守り抜く、いい男…!
この2人を応援しすぎて、邪魔してくるキャラが本当にうっとうしかったです(笑)
悪人も善人も度:★★★
立場的に、エヴェリーンもヴァルターも強くないので、
しばしば上司や権力のある人物に、捜査を邪魔されがち。
しかし、2人には味方になってくれる人間もいて、
ときに素晴らしいファインプレーを見せてくれます。
エヴェリーンを口説きながらも、何だかんだで誠実に協力する私立探偵・パトリックと、
ヴァルターに可能な限り協力する、殺された少女の心理療法士・ゾーニャの2人が、
いい仕事してますし、他にもいい人がナイス活躍。
対して、真相が明らかになるにつれて、裏の顔を表す、悪人たち…!
その悪人レベルは、かなりのもの!
最後には、きっちりがっちり罰されないと、腹の虫がおさまらないわ~と思いながら読んでいたら、
いつの間にかクライマックスで止まらなくなる、いつものパターンでした…。
この2人、「刺青の殺人者」という続編があり、こちらも面白そう。
2つの事件がクロスして、全体像が…!というミステリが好きな人におすすめです。
緻密に組み立てられた、ドイツミステリを、ぜひお楽しみください!