作者名:ニール・ゲイマン 角川文庫
緑の液体が飛び散る惨殺死体にベイカー街の名探偵が挑む「翠色の習作」、女性が忽然と失踪した、いかがわしく謎めいたサーカスへと誘われる「ミス・フィンチ失踪事件の真相」、ナルニア国物語に登場する美少女のその後に驚く「スーザンの問題」、女の子に声をかけようと奮闘する少年の純真を描く「パーティで女の子に話しかけるには」など、儚く美しくグロテスクな31編を収録。空前絶後の想像力に満ちた短編集。
ヒューゴー賞やローカス賞の短編部門を受賞した、高評価の作品もいくつか収録!
作者の個性が爆発した短編と詩に唖然とする、インパクト強めの短編集です。
とにかく色々なジャンル度:★★★★
31編の作品(詩もいくつかあり)が収録された、ボリュームのある短編集です。
書かれているジャンルは、ミステリ・SF・怪奇・ホラー・幻想・パロディ・風刺・ユーモアと、
多岐にわたります。
ジャンルは様々ですが、どこか悪夢的な世界へ連れ去られそうになる、
妖しく幻想的な雰囲気の作品が多かったような…。
どの物語も、発想が面白い!
何となく、作者の‟こういうのが書きたいから書きました”という気持ちが伝わってくる本でした。
物語の斬新度:★★★★★
たくさんあるので、気に入った短編について簡単に…。
最初に収録されている、「翠色の習作」はヒューゴー賞の短編小説部門を受賞した作品で、
これは確かに面白いし印象に残る!と思いました。
シャーロック・ホームズの物語に、意外な要素を盛り込んだ作品で、
なるほどこういう変わり種なのね、と思ったらそれだけではなかった、斬新なミステリ!
個人的にかなり好きなのが、「顔なき奴隷の禁断の花嫁が、恐ろしい欲望の夜の秘密の館で」。
何じゃこの題名?と思って読んだら、まさかのストーリー!
何も考えずに、読んでもらいたいです。
怪しくホラーチックで、幻想的でもある「苦いコーヒー」も、お気に入り。
自分という存在を捨てて、流れるままに移動する男の末路とは…。
う~ん、不思議なロードノベル。
何とも言えない雰囲気の不気味さ、が好きな人におすすめです。
「形見と宝」は、主人には忠実な悪党が語り手のピカレスク小説。
残酷な物語だけれど、何だかそれだけではない感じが、不思議に魅力的です。
生真面目な女性が、サーカス内で失踪。
その時何が起きたのかが語られる「ミス・フィンチ失踪事件の真相」は、何とも予想外!
読み終わったあと、実際にあったのかも…なんて想像してしまいました。奇妙な奇妙な事件。
「ハーレクインのヴァレンタイン」は、いたずら好きの妖精?が、
恋した女性にアプローチした結果迎える、意外な結末が楽しい作品です。
「ゴリアテ」はSF作品。何だかあの映画っぽいな、と思っていたら、
まさに、あの映画のウェブサイトに載せたいとの依頼を受けて書かれた作品らしく、
SF好きが楽しめる短編です。
どこかグロテスクな美食家たちが、ある食材を求める話「サンバード」は、
分かりやすく面白い作品でした。これ好きな人も多いと思う!
「パーティーで女の子に話しかけるには」は、題名通り男の子が何とか女の子に話しかけようとする話ですが、
普通にユーモラスな物語では終わらないところが、印象的で好きです。
あと、お気に入りというか、インパクトがあったのが「スーザンの問題」。
ナルニア国物語の、すごいネタバレ…。
わたしは結末知らなかったので、読後調べ…わ~お、ショッキング。
このほかの話も、大傑作!とは思いませんでしたが、何とな~く心に残る物語でした。
思ってたのと違う度:★★★
表紙がメルヘンで可愛らしいので、
ちょっと不思議なミステリとか、ユーモラスで可愛らしい物語とか、
そういうのが収録された短編集かと思っていたんです。
違った。激しく違った。
普通に怖いしグロいし、容赦なく作者の世界観が押し寄せてくる…。
好き嫌いが分かれるかもしれませんが、個性派短編が好きな人は気に入りそうです。
詩も収録されているんですよね。
あまり読んだことはなかったんですが、意味深で不穏な雰囲気も合って、なかなか楽しめました。
読み応えのある、奇々怪々な物語たち!
短編を1つずつ、味わって読みたい人に、おすすめです。