作者名:アーサー・C・クラーク 創元SF文庫(新判)
(ハヤカワ文庫「幼年期の終り」・光文社古典新訳文庫「幼年期の終わり」があり。)
宇宙進出を目前にした人類。だがある日、全世界の大都市上空に未知の大宇宙船団が降下してきた。“上主”と呼ばれる彼らは遠い星系から訪れた超知性体であり、人類とは比較にならない優れた科学技術を備えた全能者だった。彼らは国連事務総長のみを交渉相手として人類を全面的に管理し、ついに地球に理想社会がもたらされたが。人類進化の一大ヴィジョンを描くSF史上不朽の傑作!
「上主」との接触により、人間にもたらされた変化とは?
じっくり読みたい、‟考えさせられるSF”作品です。
思考の幅が広がる度:★★★★
ある日地球に、高い知性を持つ宇宙人がやってきて、
人間に友好的に接触してきます。
彼らは宇宙船の中にいて、人間に姿を見せず、
音声によるコミュニケーションで干渉。
人間は、彼らを「上主」と呼ぶようになります。
上主の進んだ考え方と技術、破壊行為をやめさせようとする方針によって、
人間の暮らしは、かつてないほど穏やかで幸福なものに。
そして、人類はそこから、どう変化していくのかというと…。
というのが、大体のあらすじです。
問題だらけの人間の暮らしに、賢い宇宙人が介入して、平和になりました。
…そうなると、人間の暮らしや考え方はどう変化していくのか。
この学問が廃れて、こっちに力を入れるようになって、
という風にリアルに詳細に描かれています。
「こういう状況で起こり得る未来」について、予想を立てて学んでいるような気分に。
面白いSF小説ですが、鋭い視点と深い見識に基づいて書かれているので、
読むと勉強になります!
学生にも大人にも読んでほしい度:★★★★★
第1部は、上主カレレンと、国連事務総長のやりとりがメインの話です。
上主の干渉を嫌がる人々が、まだまだ多い時期、
事務総長の悩みは尽きず、彼にピンチが。
そして親交を深めつつも、決して姿を見せてくれないカレレンに対して、事務総長は…?
最初の接触から、上主を受け入れていくまでの流れが描かれています。
第2部では、すっかり上主たちを受けいれて、
平和になった‟黄金時代”の人々の生活と、考えの変化が分かります。
大体の人々が満たされているけれども…?
上主たちも、人類に対し、‟何か”を待っているようで…。
第3部では、驚きの展開が!まさか、こういう話だったとは!
上主と人間は、それぞれどう進んでいくのか、
思いもしなかったビジョンで描かれ、唖然。
3つの章すべてで、人類の在り方について考えさせられます。
そして、最後まで読み終わった後は、あまりに壮大なスケールに驚愕。
う~ん、大人が読んでもためになるし、学生にもぜひ読んでほしい本です!
人類以外の立場で考える度:★★★
人類進化の一大ビジョン、がメインテーマですが、
高度な知性を持つ地球外生命体の立場と考えも、しっかり描かれています。
地球を征服するわけでもなく、過剰に干渉してくるわけでもなく、
ときに人間に対する、友情のような感情も感じさせる、彼ら。
上主の目的と、彼らの気持ちが分かったときには、何だか切なく…。
最後のカレレンの心情が、いちばん印象に残ったかもしれません。
面白くって、見識が広まる!
長く支持される、SF小説の名作はいかがでしょう?