作者名:アーサー・C・クラーク 創元SF文庫
密航したホヴァーシップが沈み、ただひとり海上に取り残された家出少年のジョニー。彼を救ったのは、なんと一群のイルカたちだった。彼らに運ばれていった先の孤島では、科学者たちがイルカ研究のために暮らしていた。しかも、所長はイルカ語を解し、このイルカたちも人間と意思を通わせることができたのだ! 名匠が、大海原の神秘と景観をあますところなく描いた海洋SFの傑作。
ああ、今すぐ海に行きたくなる!
有名作家が描く、大自然の魅力が満載の、冒険ストーリー!
冒険と大自然度:★★★★
物語の始まりから、もう素敵。
夜の港に停泊するホヴァ―シップ。
その姿を見た少年・ジョニーは、突然、そりが合わない叔母さんの家を抜け出し、
舟に乗り込むことを決意します。
突然現れた冒険の機会に、誘われるまま飛び込んだジョニーは、船の転覆事故に巻き込まれますが、
なんとイルカの群れに助けられ、彼らに連れられてたどり着いたのが、「イルカの島」。
ワクワクせざるを得ないです~。
島の自然、グレートバリアリーフのサンゴ礁、どこまでも続く海、自由に泳ぎ回るイルカたち。
南国の、のどかで魅力的な景色が、美しい文章で描かれていて、
この島に行く妄想を、ふくらましっぱなし(笑)
ジョニーが友達になった少年と一緒に、初めて夜のサンゴ礁を渡るシーンは、
海の描写が幻想的ですらあります。
この作品、夏になると、読み返したくなるんですよねぇ。
イルカの魅力度:★★★★★
イルカが可愛い、とにかく可愛い。
お利口、優しい、癒される…。
一緒に、オーストラリアの海を泳ぎたい!
小柄な子どものジョニーは、イルカにとって安心できる存在らしく、最初からなついてくれます。
イルカからの好かれっぷりを評価されて、島のイルカ研究者・カザン教授たちの実験を手伝うことに。
教授の研究によって、驚きの事実が明らかになり、研究のため、島にはシャチまでやってきます。
イルカとの新しいコミュニケーション方法も考案され、
イルカ島で研究に関わる人間たちは、ドキドキする大騒ぎに。
いつか、人生で一回くらい、イルカと触れ合う体験をしたいと思わせる作品です。
予想外の困難度:★★★
教授の研究は進み、ジョニーはどんどん島の暮らしになれて、
めでたしめでたし…とはならず!波乱が来ます。
絶体絶命のピンチに陥ったジョニー、一世一代の勝負に。
何とか苦境を乗り切って、ついに…と思いきや、最後の難関が!
クライマックスに、こんな展開になるとは思わなかったなぁ…。
200ページちょっとの、短めの作品ですが、少年の成長と友情と冒険がつまっています。
アーサー・C・クラークといえば、人類進化の一大ビジョンを描いた、
「地球幼年期の終り(または幼年期の終り)」が有名ですが、
本作はだいぶ読みやすい内容で短く、エンタメ色が強めです。
全く異なる面白さがあるので、どちらも楽しめるかと。
読むと南国の海に行きたくなる、夏に読みたい作品!
中高生にもおすすめの、傑作冒険小説です。