作者名:バリー・ライガ 創元推理文庫
ぼくには連続殺人犯の血が流れている。ぼくには殺人者の心がわかる――ジャズは高校三年生。田舎町ロボズ・ノッドではちょっとした有名人だ。ある日町で衝撃的な事件が起きた。指を切りとられた女性の死体が発見されたのだ。連続殺人だとジャズは訴えたが、保安官はとりあわない。だが事件はそれだけでは終わらなかった。
なぜジャズには確信があったのか。それは彼が21世紀最悪といわれる連続殺人犯の息子で、幼い頃から殺人鬼としての英才教育を受けてきたからだった。親友を大切に思い、恋人を愛するジャズは、内なる怪物に苦悩しつつも、自らの手で犯人を捕まえようとする。全米で評判の異色の青春ミステリ。
父親は、最悪の殺人鬼。
ジャスパーの戦いが始まる。
3部作の人気シリーズ!青春×殺人捜査に惹かれる人は、ぜひ!
ジャズを応援したくなる度:★★★★★
主人公ジャスパー(愛称ジャズ)は、賢くハンサムな高校生。
大人びていて冷静ですが、子どもの一面をのぞかせることも。
しかし、父親は21世紀最悪の殺人鬼、母親は8歳のときに失踪(父に殺害されたのでは?)、
同居する祖母は認知症と、とんでもない事情を抱えています。
父ビリーは、息子を自分以上の殺人鬼にしたかったようですが、
13歳のときに逮捕され、ジャズは普通の人生を望むように。
でも、父の血と教え(さまざまな人心掌握術や、殺人のテクニック)に、おびえているんですね。
日常において、ふと蘇るのは父の言葉…。
そんななか、ジャズが暮らす街で、連続猟奇殺人が!
怪物の知識を使い、怪物の血にのまれないように、怪物を見つけだそうとするジャスパー。
悩みながらも、身の回りの人を大切にしようとし、
頑張るジャスパーを応援したくなります。
恋人と親友のありがたさ度:★★★★
魅力的なのが、恋人のコニーと、親友のハウイーです。
コニーは黒人の美人で、演劇に興味をもっています。
ジャズを愛し支えようとしますが、彼がうじうじしているときにはスパッと叱る、芯の強い女の子。
ハッキリした性格ですが、深い愛情と優しさを持っています。
ハウイーはひょろりとした男子で、血友病患者。
明るくジョークが好きな、ジャズの唯一の友達。
ビリー逮捕後も、離れなかった親友です。
この2人の存在が、どれほどジャズを支えていることか!
重くなりがちな物語で、コニーの明るさとハウイーのユーモアが光ります。
父の危険な魅力度:★★★
そして、このシリーズを通して危険な魅力を振りまくのが、最悪の殺人鬼ビリー・デント。
まさにシリアルキラーというか、犯歴は本当に最悪なんですけど…
息子に対する歪んだ愛情と、人間離れした恐ろしい頭脳とスキルが、何とも魅力的。
刑務所にいるのに、存在感がすごい!
もちろん、今回の事件を起こしている殺人犯‟ものまね師”も、不気味です。
ジャスパーに対し、謎の執着を見せ、意味深な言動をします。
今作だけでも楽しめますが、3部作一気に読んじゃうのがおすすめ!
ファンのための、日本オリジナル短編集も出ています。
「特殊な事情を抱える主人公が捜査をする」作品としては、
「百番目の男」から始まるカーソン・ライダーシリーズもおすすめ。
読み始めたら止まらなくなるシリーズです。
ぜひ、ジャスパーの戦いを見届けてください!