作者名:福田 和代 文春文庫
ある日突然、同棲している恋人が高熱で意識不明の重体となり、
救急車で搬送される。彼に付き添い続けた悠希にも、魔の手がしのびより……。
感染爆発が始まった原因不明の新型ウイルス「バベル」に、人間が立ち向かう術は
あるのか?
日本政府はある対策を講じる決断をする。
近未来の日本を襲った緊迫のバイオクライシス・ノベル!
ウイルスの脅威にさらされたとき、人類はどうすればよいのか?
今読むべき本かもしれません…。
今、特に考えさせられる度:★★★★★
今、まさに新型コロナウイルスが、世界中に蔓延しています。
こんな時だから読みたくないともいえるし、読むべきではないかともいえます。
この作品に出てくるバベルウイルスは、日本で感染爆発。
多くの日本人が罹患し、大パニックに陥ります。
死亡率はそこまで高くないのですが、高確率で言語障害を起こしてしまう…。
かくして、非感染者と、感染者が住むエリアは、壁で隔てられるのです。
日本は、強制的に鎖国状態。
恐ろしいですよね…。
こうして感染爆発が起きている状態も恐ろしいですが、
対策がある程度進んでからも、大変!
人間性が、試され続けます。
極限の状況下で、人々がどういう行動にでるのかが、見どころ!
暴走してしまう人物も、全く理解できないわけじゃないんですよね…。
う~ん、難しい問題。考えさせられる作品です。
暴走する人間度:★★★★
首相の設楽は、ある事情で猛烈にバベルウイルスを憎んでいます。
優秀な子どもたちだけ「タワー」に隔離しようとしたり、
感染者のエリアに対して、不穏な計画を立てたり。
主人公の悠希(感染したが発病せず)は、消えた感染者の恋人を探しながら、
現状を発信するなどの活動をしています。
ジャーナリストのウィリアムは、個人的な目的のために、日本に潜入。
悠希の兄の直巳は、非感染者サイドで、バベルの研究を続けます。
感染者・非感染者ともども、自分にできることを考え実行しようとしますが、事態は悪い方向へ!
追い詰められた状態で、意志を統一しようとするのは、
何とも至難の業ですねぇ…。
言葉について考える度:★★★
会話ができなくなる、言葉が認識できなくなる。
そんな人たちが急増して、コミュニケーションがとれず、人々は混乱します。
人は、言語によるコミュニケーションにどれほど依存しているのか。
そもそも言葉って何なのか。
言語というコミュニケーション方法を失ったとき、人類はどうなるのか…。
話は、意外な方向に展開します。
ウイルスに翻弄され暴走する人々と、人間が失うことで得られるものは何かが、
この作品のテーマかと。
ウイルス感染後、人類が失うものと、新たに獲得するもの。
ぜひ、確かめてみてください。