作者名:鈴森 琴 創元推理文庫
忘却城に眠る死者を呼び覚まし、蘇らせる術で発展した亀珈(かめのかみかざり)王国。過去の深い傷を抱えた青年儒艮(じゅごん)は、ある晩何者かに攫われ、光が一切入らない盲獄(もうごく)と呼ばれる牢で目を覚ます。儒艮ら六人を集めたのは死霊術師の長、名付け師だった。名付け師は謎めいた自分の望みを叶えるよう六人に命じ、叶えられた暁には褒美を与えると言うが……。第3回創元ファンタジイ新人賞佳作入選作。
死霊術が発展した王国を舞台に、陰謀が!
和風・中華風のファンタジーが好きな人に、おすすめです。
漢字の用語が多い度:★★★★★
何といっても特徴的なのが、漢字の多さと、設定の細かさ。
この辺は、好き嫌いが分かれそうです。
この人の名前の、正しい読み方何だっけ?となることもチラホラ…。
死霊術の方法や種類、王国の体制や歴史、人外の存在、他の国の事情などなど。
未知の世界を一から作り上げているので、仕方ないかもしれませんが(汗)
そもそも、設定が中華風だし。
また、2020年4月時点で続刊の「忘却城 鬼帝女の涙」が出ており、
5月に「忘却城 炎龍の宝玉」が発売予定なので、
シリーズものとしての設定の細かさもありそうです。
読んでいるうちに、世界観になじんできて、楽しめました。
何だかんだで、話が面白いもんで。
読んだ後に気づいたんですけど、後ろに用語集が…。あらら。
独特の世界観度:★★★★
主人公たちの住む国では、死霊術師は強い権力を持っています。
その中でも、術死の長・縫(ほう)の力は、王族も警戒するほど。
物語は、縫が秘密裏に6人の人物を集め、ある命令を下すところから始まります。
何人かの人物の視点から語られるのですが、集められた中の1人・儒艮(じゅごん)と、
死霊術師の少女・舞蒐(ぶしゅう)のサイドで、事態が大きく動きます。
この儒艮、優秀な家庭教師かと思えば、驚きの過去を持っています。
後から出てくる因縁の、多いこと!
登場人物たちの因縁と、不気味で不可思議、どこか厳かな雰囲気の世界観が合わさって、
独特の作品になっています。
死霊も出るし、人外の化け物も出るし、
ダークファンタジーが好きな人には、そそられる世界観かと。
主人公侮れない度:★★★
主人公の1人・儒艮が頭いいです。
察しがよすぎないか、と思ってしまうシーンもいくつか(笑)
ハンデがある人なんですけど、頼りになります。
死霊術師側の主人公といえるのが舞蒐ですが、
悲しみを抱えながらも、大胆不敵な末恐ろしい少女です。
ラストでは、とんでもない目に。一番びっくりしたかも…。
彼らのその後が気になるので、3作目まで出たら、一気に購入予定。
今後が楽しみなシリーズものです。
ヨーロッパ風や砂漠が舞台のファンタジーをよく読む方、
たまには毛色が違う作品はいかがですか?