作者名:岡田 秀文 光文社文庫
明治二十六年、杉山潤之助は、旧知の月輪龍太郎が始めた探偵事務所を訪れる。現れた魚住という依頼人は、山縣有朋の影の側近と噂される大物・漆原安之丞が、首のない死体で発見されたことを語った。事件現場の大邸宅・黒龍荘に赴いた二人を待ち受けていたのは、不気味なわらべ唄になぞらえられた陰惨な連続殺人だった──。ミステリ界の話題を攫った傑作推理小説。
古き良き、正統派ミステリかと思ったら?
この結末は、本当に恐ろしい!久々にドン引きしました…。
事件の不気味度:★★★★
語り手・杉山は、探偵になった友人・月輪に会いに、彼の探偵事務所を訪れます。
ちょうどその時、彼に恐ろしい仕事の依頼が。
探偵事務所にやってきたのは、政界に影響力をもつ影の大物・漆原の秘書を務める男。
彼が言うには、漆原の首なし死体が、彼の邸宅である黒龍荘の金庫室で発見され、
現在は、警察が極秘の捜査をしているというのです。
聞くところによると、最近漆原のもとには、謎の脅迫状が届いていたとのこと。
黒龍荘には、秘書の他に、何人かの妾がおり、
警察は内部の人間も疑っているような態度をとったので、
全く関係がない第3者の立場である探偵に、
偏見抜きで捜査に加わってほしいとの依頼でした。
月輪探偵は依頼を受け、語り手の杉山も誘われてついていくことになったのですが、
黒龍荘では、さらにわらべ歌になぞらえた連続殺人が起き、つぎつぎと死体が…!
美しい妾達は、隠し事がありそうな不審な態度を見せるし、
謎は深まるばかりです。
脅迫状、首を切られた死体、訳ありの屋敷の住民、わらべ唄になぞらえた殺人。
何となく、横溝正史を彷彿とさせる雰囲気ですね。
杉山さん、冒頭からしきりに、「ついていくんじゃなかった…。」と後悔しています。
その後悔っぷり、最後まで読んだら、すごく納得しました。
わらべ唄になぞらえて、どんどん陰惨な事件が発生。
童謡×屋敷×連続殺人って、おどろおどろしいですよね。
舞台が明治時代なのも、雰囲気をパワーアップさせるというか…。
こわいこわい!
最終章の衝撃度:★★★★★
とにかく、つぎつぎに事件が発生。
どれも状況が不可解で、探偵・月輪も警察も、翻弄されます。
昔の政治事件の関連がほのめかされたり、被害者の後ろ暗い過去が判明したり…。
事態は、泥沼に!
クライマックスが近づいても混沌としているので、ちゃんと犯人にたどり着くのかな?
と心配になるほど。
しかし最後には、今までの謎がすぱすぱっと明かされるのです。
その内容が、もうおもわず「げっ!」と呻いてしまうようなもの。
読んだ後、まず「うわ~」って言いました…。
いままで読者は振り回された分、解決編でああスッキリした!となるかと思いきや、
衝撃が強くて、「………。」
でも確かに面白いです!刺激的な読書体験になりました。
正統派ミステリ度:★★★
探偵、補佐役の友人、頑固な刑事、記者、いわくありげな屋敷の関係者などなど。
いかにも、という登場人物ですね。
金田一耕助の映画みたいというか、2時間のサスペンスドラマみたいというか。
設定としては、本当に正統派だと思います。
ただ、ありきたりと思っていたら、とんでもないことになりますけどね…。
探偵助手の、氷川嬢が好きです。
おしとやかな令嬢かと思いきや、あらあらあら!
全体に重ーい雰囲気の本作のなかで、探偵事務所の面々が、楽しくてお気に入り。
好きな人には、たまらない設定と展開かも!
おどろおどろしい昭和のミステリが好きな方…いかがですか?