作者名:キャリー・パテル 創元SF文庫
旧文明の崩壊から数百年。多くの人々は地上を厭い、巨大な地下都市国家に暮らしていた。その一つ、ヴィクトリア朝風の階級社会が栄えるリコレッタでは、旧文明の知識は重大なタブーである。そんな中「プロメテウス」なる極秘計画に関わる歴史学者が殺された。女性捜査官マローンの活動は、なぜか上層部から妨害を受ける。そして貴族社会の裏側に出入りする洗濯娘ジェーンも、謎の男アルノーと出会って事件に巻き込まれてゆく……。
クールな女刑事と、気丈な洗濯娘が、謎を解こうと奔走。
相棒とともに、秘密に迫る!
美しい地下都市度:★★★
文明が崩壊して以来、多くの人々は地下都市へ移住しました。
地下都市はいくつかあるらしいのですが、
主人公たちが暮らすリコレッタは、ヴィクトリア朝風の美しい都市。
裕福な人が暮らす地区は、特に優美で豪華です。
暮らし向きも昔風というか、お金持ちの衣装を洗う洗濯娘がいたり、
身分差があったり、舞踏会が開かれたり。
かと思えば、化学処理されたクリスタルが明かりに使われていたりと、ハイテクな部分も。
このアンバランスさが、何とも魅力的です。
その時代の文明に合わせて栄えているから、自然で親しめるのに、
‟あえてそういう雰囲気に設定しています”感があって、ちょっといびつな美しさというか…。
幻想的で美しく、少し不気味な地下都市が、
作品全体の雰囲気をつくっているように感じました。
応援したくなる女性度:★★★★
女性捜査官マローンは、クールな一匹狼です。
しかし、新人の人懐こく優秀なサンダーとは打ち解け、2人で協力して捜査します。
あまり感情を表に出さないタイプですが、サンダーをさらっと褒めたり、
たまに見せる優しさがぐっとくるキャラですね。
洗濯娘ジェーンは、頑張り屋で芯の強い女性です。
孤児ですが、新聞記者のフレデリックと助け合いながら暮らしています。
しかし、腕のいい洗濯娘だったがゆえに、事件に巻きこまれることに。
まぁ、その後のごたごたは、彼女の性格もおおいに関係しているかもしれませんが…。
謎の男アルノーとの駆け引きにもドキドキします!
捜査にハラハラ度:★★★
地下都市では、旧文明の知識はタブー。
捜査には、評議会が妨害をいれてくる。
過去には、謎の残る事件がある。
…何だかとっても、陰謀の予感がしますね!
つぎつぎ事件は起こるし、妨害勢力にバレないように捜査をしなくてはならないし、
マローンとジェーンの状況は、つねに緊迫しています。
と思いきや、舞踏会でドレスアップするシーンがあったり、
3つの階層をなす巨大市場のシーンもあり。
地下都市というと陰鬱な印象ですが、賑やかで華やかな部分の描写もあって、楽しめます。
と思っていたら、後半は大混乱のアクションシーンに突入しますが。
この本は3部作らしいので、続刊が出たら買おうと思います。
ディストピアもの好き、異なる社会・文化が好きな人におすすめです。