作者名:ポール・アルテ ハヤカワ・ミステリ文庫
密室で夫人が自殺して以来、奇怪な噂の絶えないダーンリーの屋敷。幽霊が歩き回るというこの家に移り住んできた霊能者の夫妻は、関係者を集めて交霊実験を試みる―それは新たな事件の幕開けだった。死体を担ぐ人影。別の場所で同時に目撃された男。そして呪われた部屋に再び死体が現れる…奇術のごとく繰り出される謎また謎!各探偵の語る最後の一行が読者にとどめを刺す!フランス本格推理の歴史的傑作。
正統派ミステリかと思いきや!「ええ~?」の連続!
1部2部3部…と、目まぐるしく変化するミステリです。
古典的な魅力度:★★★
舞台となるのは1950年代のイギリス。
平凡な青年ジェイムズの視点で語られる物語。
近所のダーンリー屋敷は、数年前に屋根裏部屋で、
妻がまったく予兆なく自殺をして以来、
ふさぎこんでしまった夫ヴィクターと息子ジョンが住んでいます。
2・3階は、間借り人に貸していたのですが、
なぜか皆ここは嫌だと言って、出て行ってしまう…。
すっかり不吉な幽霊屋敷扱いされていましたが、
美しい夫婦がやってきて、状況が変化。
霊能者の妻アリスが、妻を事故で亡くしたばかりの作家アーサーに感銘を与えたことで、
ヴィクターが、妻エレノアの霊との交流を望むようになります。
この間、アーサーへの謎の傷害事件、アーサーの息子ヘンリーの失踪などの事件が起き、
何が起きているのか、不安を募らせるジェイムズたち。
そしていよいよ屋根裏部屋で交霊実験となるのですが、
密室のはずの部屋から男性の死体が…!
心理学に詳しいドル―警部が捜査を担当しますが、
捜査中も、読者が⁇⁇となってしまう事態がつぎつぎ起きて、
一体どういうことと、謎が深まるばかり。
第1部も第2部も、大きな謎を提示した形で終わってしまいます。
と思っていたら、第3部第4部と、予想外の展開を見せ、一気に驚愕と戦慄のラスト!
正統派ミステリだと思っていたので、想定外の展開続きにドキドキして楽しめました。
密室、霊能者の夫婦、交霊実験、幽霊が出ると噂の屋敷…
古典ミステリの魅力が、満載の設定になっています。
謎の残る自殺と、不幸な事故に見舞われる一方、
つぎつぎと起こる、不可解な傷害事件・失踪・殺人。
本当に、次から次に混乱の事態になるな…という印象の作品でした。
心理分析に自信を持つ警部が、いささか珍妙な説を披露したり、
同じ人物が同時刻に別の場所で目撃されたり、
犯人の足跡が雪の上に残っていなかったり…
とにかく読めば読むほど、訳が分からなくなります!
みんなが、怪しく見えてきてしまう!
2段構えの衝撃度:★★★★★
あまりにも、いろいろな事件が起きるので、
これ、ちゃんと収拾つくのかな?と思っていたら、第3部から作品の様相が変化。
こういう作品、たまに見ることがあるな、と思ったら…
第4部の謎解きで、たくさんの謎が一気に解けてすごい!となり、
第5部のクライマックスで、なんとそういうことか!と驚き、
ラストで、まだ騙されてた!という驚愕のラスト。
紹介文の通りでした~、最後の一行は、ガツンときますね。
まさかあんなことが…度:★★★★
作中で、事件捜査の途中で、ある人物が一つの話をするんですけれど、
それが、とんでもない事態をもたらすことに!
あの人物の死が、あの時の言動が、実はこういうことで、これがきっかけになっていて…
という繋がりが、
一気に明らかになる第4部は、なるほどね~と最初納得するのですが…。
だんだん、んっ?という雲行きになってゆき、
何ということだ!というしかない真相にたどり着く!
最後まで、読者を翻弄するミステリでした。
謎が謎を呼ぶ!後半の謎解きラッシュが素晴らしい。
本格ミステリ好きに、おすすめの、刺激的な作品!