作者名:米澤 穂信 創元推理文庫
あの日の放課後、手紙で呼び出されて以降、ぼくの幸せな高校生活は始まった。学校中を二人で巡った文化祭。夜風がちょっと寒かったクリスマス。お正月には揃って初詣。ぼくに「小さな誤解でやきもち焼いて口げんか」みたいな日が来るとは、実際、まるで思っていなかったのだ。―それなのに、小鳩君は機会があれば彼女そっちのけで謎解きを繰り広げてしまい…シリーズ第三弾。
ぼくは思わず苦笑する。去年の夏休みに別れたというのに、何だかまた、小佐内さんと向き合っているような気がする。ぼくと小佐内さんの間にあるのが、極上の甘いものをのせた皿か、連続放火事件かという違いはあるけれど…ほんの少しずつ、しかし確実にエスカレートしてゆく連続放火事件に対し、ついに小鳩君は本格的に推理を巡らし始める。小鳩君と小佐内さんの再会はいつ―。
互恵関係を解消し、新しいパートナーを見つけた2人。
なのに、彼の彼女の影がちらつく…。
ついに2人が邂逅するとき、下される結論は?素晴らしきラストの3作目!
分かれたって、やっぱり2人は…度:★★★★
お互いに本性を隠し、小市民的高校生活を送るために、互恵関係を築いた小鳩君と小佐内さん。
シリーズ2作目の前作「夏期限定トロピカルパフェ事件」で、その関係は解消されることになりました。
2人とも、夏休み以降は、全然会話をしなくなったようです。
それからはどうなったかというと…。
夏の誘拐事件からしばらくして、小鳩君も小佐内さんも、相手に告白される形で交際中!
小鳩君は、大人っぽいお洒落な女子・仲丸さんと、
小佐内さんは、校内新聞「月報船戸」をより面白くしようと燃える新聞部員・瓜野くんと。
相変わらず本性を隠しながら青春を謳歌し、幸せの絶頂…
とはならないんですな、この2人は。
小鳩君は、つい日常の謎を解こうとしてしまうし、
小佐内さんは、瓜野君の応援をしつつ、怪しい行動をとるようになるし…う~ん。
普通の生徒との交流シーンで、際立ってしまう、2人のどことなくおかしなノリ。
瓜野君が、規模は小さいけれど連続して起きている不審火騒ぎを「月報船戸」で取り上げ、
注目される人物にならんと奮闘し始めたことで、だんだん事態はおかしくなっていきます。
小鳩君と小佐内さんは、お互いの新しいパートナーと上手くいくのか?
連続放火魔の正体を暴こうとする瓜野君に、勝機はあるのか?
変わらず謎めく小佐内さんの行動の真意とは?
物語が進み、作中で受験生になる2人は、連続放火事件に首を突っ込むことになり…。
いろいろ気になることは多いけれど、結局2人は変われるのか?
高校生活も終盤に差し掛かった彼らが出した結論は?ぜひ読んで確かめてみてください!
これを待ってました!度:★★★★★
今回も、スイーツを堪能する小佐内さん。
前作のスイーツセレクションで名前が出てきたお店で、またもや美味しそうなスイーツをもぐもぐ。
このスイーツシーンがないと、もはや物足りないシリーズです。
つい出しゃばっちゃう小鳩君も健在。
本性を知らない人たちから見た2人の印象が描かれていて、思わず読者はニヤリとしてしまいます。
質実剛健な高校生・堂島君も、新聞部部長かつ2人の数少ない理解者?として活躍。
相変わらず2人には振り回されますが、部長として貫禄がついた彼の、頼もしさが光ります。
おのおのの学校生活やプライベートが描かれた後で、
連続放火事件がクライマックスを迎える中で、
ついに小鳩君と小山内さんが接触し、2人ならではの会話と謎解きが!
これを、これを待ってたんですよ~。
一切直接的な絡みがないまま進み、物語終盤についに交わされたやり取りが素敵すぎて、たまらない!
ファンとして、大満足の解決編でした。
ふとした文章にニヤニヤ度:★★★★
序盤から日常の謎を挟みつつの、連続放火事件をめぐっての、各人の動きが面白いです。
放火事件のクライマックスシーンは、とにかく好き!
(一人だけ、トラウマレベルの悲惨な目に合った人がいましたけど…。)
そのクライマックスシーンと同じくらい好きなのが、事件解決後の一コマです。
2人のスリリングな駆け引きと、何とも思わせぶりな会話と、最後の意外な真相。
いちごタルトからの、トロピカルパフェからの、栗きんとんは、
シリーズ通して読んだ人だけが味わえる、極上の味わいに違いありません。
11年ぶりの新刊「巴里マカロンの謎」が今年出たのですが、時間軸が本作より前の短編が収録されていて、
続刊というより、短編集。
ということは、今後いつか「冬期限定○○事件」という最終巻が出るんでしょうか…楽しみ!
関係解消後、放火事件をきっかけに、2人の‟らしさ”がついに爆発?
トロピカルパフェ事件から、一気に読んでほしいおすすめ作品です!