作者名:フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫SF
第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しかもっていないリックは、そこで火星から逃亡した〈奴隷〉アンドロイド八人の首にかかった賞金を狙って、決死の狩りをはじめた! リドリー・スコット監督の名作映画『ブレードランナー』原作
読むほど不安感がつのる…。
主人公は、アンドロイド狩りの後に、何を思うのか!
対アンドロイドの頭脳戦度:★★★★
主人公リックは、最初は本物の羊を持っていたのですが、
病気で死んでしまい、そっくりな電気羊を飼っています。
でも、本物が欲しくてたまらない。
新型アンドロイドを狩って、賞金を得ようとします。
しかし、この新型アンドロイドは手強く、なかなか人間と区別がつきません。
狩られないように、驚きの策を練ってきます!
読んでいて、けっこう騙されてしまいました…。
すでに前任者が、撃たれて戦線離脱。
主人公は騙されずに、任務を果たすことができるのか、ハラハラです!
ステータスの虚しさ度:★★★★★
死の灰に汚された地球、他の惑星に移住できなかった住人、灰の影響を受けた‟特殊者”の烙印。
気分を調整するための‟情調オルガン”、「マーサ」と繋がるための‟共感ボックス”。
地位を証明するための、本物の動物。
…殺伐として、気が滅入る世界ですね。
この稼ぎで、この動物を買ってみせる!みたいなやり取りのたびに、何だかすごく切なくなります。
残された人々は、ステータスにすがるしかないのかなと、虚しい…。
人類の置かれた状況が状況だけに、もっと楽しそうなことをすればいいのに~とか、
軽々しく言えないし(汗)
登場人物たちとしては、もうこれが普通になっているから疑問に思わないんですけど、
何かきっかけがあって、一度ふと考えてしまうと…
はてさて、リックはどうなってしまうのか!
主人公の心境変化度:★★★
最初リックは、とにかく稼ぎたいので、アンドロイドをやっつけることしか考えません。
しかし、狩りの途中で、アンドロイドと言葉を交わすうちに、心境の変化が。
アンドロイドだって、自我がありますからね。
アンドロイドの感情に触れるたびに、リックの迷いは強くなり…。
全てを終えた後、リックに何が残るのか、心配になりました。
アンドロイドと過ごすことに幸福を感じる、一人ぼっちの‟特殊者”。
みんなの支えである、マーサ教の真実。などなど…
考えさせられることが多い、哲学的なSFアクション小説です!
アンドロイドやクローンと、人間の問題。
こういったものを描いたSFが好きな人に、おすすめです。