作者名:恩田 陸 集英社文庫
人類を悲惨な運命から救うべく、国連に歴史の介入点に選ばれた1936年2月26日、東京。時間遡行によって歴史を修復するため選ばれた安藤大尉らには別の思惑が…。著者新境地の歴史SF大作。
物語が進むほどわかってくる、人類が置かれた危機的状況。
未来を守りたいのに、トラブル、トラブル、またトラブル!
だんだん引き込まれる設定度:★★★
紹介文と序盤を読んだだけでは、
「時間遡行して過去を修復して、未来のゆがみを直す」みたいな話かな?
と漠然としか分かりません。
時間遡行技術が開発され、未来人が過去に介入したために、
どんな悲惨なことが起きたのかも、
なぜ「二・二六事件」を、史実通りにやり直さなければならないのかも不明。
しかし始まりから、登場人物の意味深な会話と、不可思議な現象が続いて、
どういうことなのか、気になる気になる!
最初から、物語に引き込まれてしまいました。
再生プロジェクトの重要な機械が、「シンデレラの靴」なんて名前なのも、
ときおり謎の導入部が挟まれるのも、独特の雰囲気で素敵。
読み進めて状況がはっきりわかってくると、ますます面白い!
過去を変えるのではなく、必死に台本通りに進めようとするのも変わった設定で、
恩田SFを楽しめる作品です。
思惑が重なってトラブル続出度:★★★★
プロジェクトのプレッシャーでピリピリしているけれど、
必死に職務を果たそうとする国連職員たち。
一度死んで、歴史から退場したにもかかわらず、
協力者として参加することになった、3人の陸軍将校。
全くそんなことは知らず、国のためと信じ、反乱軍に参加する兵士たち。
ただただ混乱を収束させたい上層部。
彼らの思惑が重なりあい、何度やり直しても、歴史は少しずつ、ときに大きくずれていきます。
もう本当に、次から次へと問題が発生して、ハラハラハラハラ!
特に上巻のラストでは、あらららら…という事態に。
上・下巻ですが、一冊が280ページくらいですし、
展開が早く、特に事件に詳しくなくても読み進められるので、
結構早く読破できました。
歴史が絡むSF作品ですが、読みやすかったです。
どっちも応援したい度:★★★★★
国連職員側の主人公が、日本の記録確定省の職員で、
若い、ちょっと頼りない感じの青年・マツモト。
協力者となり連絡機を持って行動するのが、
実直で部下に信頼されている安藤大尉、
カリスマ性のある美男子の栗原中尉、
傑物と言われ一目置かれる男の石原大佐、以上3人。
マツモトも応援したくなる人物であり、とても重要な存在ですが、
自分たちの悲劇的結末を知っていながらも、協力するしかない軍人3人の、
葛藤が胸に迫って、切ない!
でもタイムリミットは容赦なく近づき…
登場人物の心の揺れ動きからも、目が離せません。そして、意外なラスト!
歴史は事故を修復するはずなのに、どんどんズレる異常事態…その原因とは?
傲慢な人類のプロジェクトが招くのは、予想外の結末!