作者名:筒井 康隆 新潮文庫
精神医学研究所に勤める千葉敦子はノーベル賞級の研究者/サイコセラピスト。だが、彼女にはもうひとつの秘密の顔があった。他人の夢とシンクロして無意識界に侵入する夢探偵パプリカ。人格の破壊も可能なほど強力な最新型精神治療テクノロジー「DCミニ」をめぐる争奪戦が刻一刻とテンションを増し、現実と夢が極限まで交錯したその瞬間、物語世界は驚愕の未体験ゾーンに突入する!
美しく、キュートで、聡明なパプリカ。
患者の苦しみを夢から探し出す彼女ですら、DCミニに翻弄され…⁉
第1部と第2部で違う楽しみ度:★★★★★
物語の舞台は、PT(サイコセラピー)機器によって、
精神疾患を患う患者の夢を、画像や動画としてチェックし、
そこから精神分析を行う、という治療が行われている近未来。
精神医学研究所に勤める美貌の女性・千葉敦子は、
同僚の時田とともに、ノーベル医学生理学賞候補とされるほど、優秀なセラピストです。
しかし、彼女にはPT機械を用いて患者の夢にジャック・インし、
夢の中の登場人物となりながら、治療を行う「夢探偵パプリカ」であった、
という秘密の過去があるのでした。
ある事情で再びパプリカとなった彼女と、時を同じくして、
パートナー的存在である時田は、超小型PT機器「DCミニ」を開発するのですが、
これには、開発者の予想を超えるポテンシャルがあり、
現実の世界を大混乱に陥れることになってしまうのです。
研究所内には、敦子と時田の活躍を快く思っていない人間がいて、
DCミニが盗まれるから大変!
この最新機器を付けた人間は、他人の夢に同調して侵入したりできるのですが、
思いもよらぬ作用があったため、
盗んだ側も盗まれた側も、挙句の果てには関係がない一般市民も、
混沌の世界に突入する羽目に!
第1部では、夢探偵として治療に臨むパプリカの活躍が、
第2部では、DCミニをめぐる、夢と現実が混ざり合う混沌の事態を楽しめます!
パプリカの‟治療”が気になる!度:★★★★
第1部で千葉敦子は頼み込まれて、しばらく行っていなかった夢探偵の活動を再開。
突然、不安の発作に襲われるけれど、原因にはっきり心当たりがない男性の、
夢に潜入して治療に臨みます。
最初は夢を映像で見て、簡単な分析を行い、
その後は患者の夢にジャックインし、患者に夢で語り掛け本人に必要なことを意識させて、
原因を探り、本人に気づかせます。
いかにも夢、という感じの意味不明な状況で、パプリカの冷静な観察が行われ、
謎が明らかになっていくのは、探偵小説めいた面白さがありました!
第2部は、DCミニを奪った敵との、摩訶不思議な戦いという印象なので、
近未来SF推理ものといった第1部と、どっちが好きか悩むところです…。
妖しい魅力度:★★★
夢分析と謎解きと、研究所内のトラブルにドキドキする第1部に比べ、
DCミニによって、ありえない現象が巻き起こる第2部は、
緊迫の戦いの連続ながら、どこか退廃的で妖しい雰囲気。
パプリカと、彼女のために戦う男性たちとの関係もあるんですけど、
敵側もなかなか濃い…。
というか、黒幕初老男性と腹心の部下美青年が、ある意味パプリカよりすごい?
DCミニ何に使っとんねん!(笑)
いろいろな人の夢が混ざり合って、怪物が出るわ妖怪が出るわで、
第2部からは、より刺激的な内容となっております~。
「夢」をめぐって、陰謀が加速する!
夢探偵の、現実離れしまくりの活躍を、お楽しみください!