作者名:市川 憂人 創元推理文庫
特殊技術で開発され、航空機の歴史を変えた小型飛行船〈ジェリーフィッシュ〉。その発明者であるファイファー教授を中心とした技術開発メンバー6人は、新型ジェリーフィッシュの長距離航行性能の最終確認試験に臨んでいた。ところが航行試験中に、閉鎖状況の艇内でメンバーの一人が死体となって発見される。さらに、自動航行システムが暴走し、彼らは試験機ごと雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術もない中、次々と犠牲者が……。
精緻に描かれた本格ミステリにして第26回鮎川哲也賞受賞作。
21世紀の「そして誰もいなくなった」と話題に!
最初から、ずっと騙されました!
クローズドサークル度:★★★★★
少し現代とは違う進歩をとげた、U国(アメリカかな?)が舞台です。
まるでクラゲのように見える飛行船の、ジェリーフィッシュで殺人事件が。
ジェリーフィッシュを開発したメンバーが、新型の飛行実験中に、不時着。
のちに、6人全員死亡で発見されます。
6人目線と、地上で事件後の捜査をする刑事視点で進みますが、何とも不可解な事実が。
6人は、全員が明らかに他殺なのに、他に誰かがいた痕跡がないのです!
まさに、「そして誰もいなくなった」ですね。
クライマックスで、最初から決定的に騙されていたことに気づいて、唖然とします!
ナイス相棒度:★★★★
地上で捜査するのが、A州フラッグスタッフ署のマリアと漣。
この2人の、掛け合いが好きです。
マリアはなかなか切れ者だけれど、普段のだらしなさがすごい。
赤毛のゴージャスな美女なのに、身だしなみがいい加減で、性格も口調もざっくばらん。
部下の九条漣は、J国人(日本かな?)で、若く理知的で、つねにキッチリして冷静。
そして、上司のことを、丁寧な口調でボロクソに言います(笑)
ちょくちょく年齢や、単純なところを揶揄して、何だか楽しんでる?
残忍な事件と、きな臭い過去が出てくる作品の中で、この2人の会話がコントみたいで(笑)
事件にかかわる軍人さんも、マリアに振り回され気味。
続編の会話も楽しみ~。
シリーズに、今後も期待度:★★★
開発メンバーの秘密、脅迫者、謎が残る過去の事件。
死んだ少女、軍の行動、ベールに包まれた新技術。
これらの謎が、精緻に組み込まれていて、高評価が納得のミステリに!
6人のシーンを再読して、どう騙されたのかをチェックしたくなります。
地上組も、よくこの真相にたどり着いたな…と感心しちゃう…。
ミステリ好きには、たまらない!
丁寧に作りこまれた、トリックの世界!