作者名:ユッシ・エーズラ・オールスン ハヤカワ・ミステリ文庫
第二次世界大戦中、敵地で撃墜された英国軍パイロットのブライアンとジェイムズ。ドイツ軍兵士になりすましたものの、彼らが搬送されたのは悪徳将校たちの虐待が横行する「アルファベット・ハウス」と呼ばれる病院だった……。〈特捜部Q〉シリーズ著者による大作。
人体実験同然の治療が行われる病院“アルファベット・ハウス”で精神病を装っていたのは、ブライアンとジェイムズだけではなかった。軍の財宝を着服したナチスの悪徳将校たちも、戦線から離れるため病人のふりをしていたのだ。過酷な状況に耐えるふたりだったが…。時は流れ、一九七二年。五輪を控えた戦後ドイツでかつての偽患者たちは再び大きな運命の渦へと飲み込まれる。北欧ミステリの雄が描く友情と愛憎の物語。
上巻が、まさかこんな展開になるとは!
戦争の悲劇、2人の友情が苦しい…それでも読んでしまう。
こういう話とは思わなかった度:★★★★
上巻では、敵地に落ちてしまったパイロット2人が、
ドイツ人のふりをして、何とか脱走のチャンスを得ようとします。
戦時中+恐ろしい精神病院という、油断が許されないシーンが続いて、心臓に悪い…。
戦場の描写はそんなにないんですけれど、この精神病院と、
兵士たちの受けた傷が恐ろしい!
下巻からは、終戦後の話に。
イギリスで平穏な生活に戻った主人公が、再びドイツを訪れるところから始まります。
上巻を読んでいる時は、てっきり全編とおして、精神病院からの脱出劇かと思ってたんですね。
ところが、2人のイギリス人兵士と、悪徳将校たちの物語は、どこまでも続いていたんです!
下巻は、本当にじりじりしました。
主人公、早く事実に気づいて~と、やきもき…。
じりじりしすぎて、もう我慢ならん!と結局一気読みしました。
悪人、許せない度:★★★★★
戦争が終わったら一財産築こうと、計画を立てる偽患者たち。
自分たちのためなら、他人に危害を加えることも、何とも思いません。
女性にもひどいし。
腹黒くて、ずるくて、ちゃっかりしてて、何よりしつこい!
いや本当にしつこいですよ…武闘派な1名が特に。
読んでいて、この悪人どもめ~とイライラしました。
早く罰当たれ~、早く罰当たれ~、
と思いながら読んでいたら、いつの間にかクライマックスに…。
重厚なサスペンス度:★★★
戦時中の精神病院から続く、因縁のサスペンス。
舞台は戦後に移りますが、人はみんな戦争で傷を負い、苦しみを抱えて生きています。
戦争の苦しみは過去のものではなく、今も続いていて…。
そんな状況から、何とか抜け出そうとする人たちの、重厚なドラマでもあるのです。
あまりにも尋常ではない事態に陥ってしまった、若かりし頃。
生きていれば、苦しみからいつかは抜け出せるのか。
ここの部分も、作品のテーマなのかなと思いました。
2人の運命を、ぜひ見届けてみてください。
重いんですけど、読むのが止まらず!
どっしりとした大作が読みたい人に、おすすめです。