作者名:城平 京 講談社タイガ
妖怪から相談を受ける『知恵の神』岩永琴子を呼び出したのは、何百年と生きた水神の大蛇。その悩みは、自身が棲まう沼に他殺死体を捨てた犯人の動機だった。―「ヌシの大蛇は聞いていた」山奥で化け狸が作るうどんを食したため、意図せずアリバイが成立してしまった殺人犯に、嘘の真実を創れ。―「幻の自販機」真実よりも美しい、虚ろな推理を弄ぶ、虚構の推理ここに帰還!
殺人事件に巻き込まれては、怪異も困ってしまう?
知恵の神という名の相談役は、どの悩みも解決します…虚構の推理で!
とんでも設定再び度:★★★★
噂によって、人を襲う力をつけてしまったグラビアアイドルの亡霊を、
人々が納得し、かつ刺激的で満足する、こじつけ極まる虚構の推理を用い、
存在を否定し退治するという、斬新な前作「虚構推理」。
本作は、主人公で怪異の相談役・琴子の活躍をまとめた短編集で、
彼女が依頼を受けた、5つの事件が収録されています。
そのどれもが、とんだ奇妙な物語で、見るからに面白そう!実際面白かった!
今回も、「正しい推理」ではなく「納得する虚構の推理」がメインなのですが、
琴子の鋭い指摘によって、事件の謎が明らかになるエピソードもあり、どの話も楽しめました。
げに恐ろしきは人間かな…と感じる話が多いのもありますが、
それにしても、怪異たちが意外と純朴で可愛い(笑)
意外な設定と斬新なミステリ、魅力的な登場人物を変わらず楽しめる、短編集です!
そう来るか虚構の推理!度:★★★★★
第1話「ヌシの大蛇は聞いていた」は、山のヌシである大蛇が、
自分の棲む沼に他殺死体を捨てられ、すでに逮捕された犯人が言ったひとことが、
気になってしょうがない、という話。
‟琴子がなぜ虚構の推理をするのか”を改めて認識するエピソードで、
彼女がつぎつぎ出していく推理と、最終的に大蛇を納得させる手腕に慄きました。
第2話「うなぎ屋の幸運日」は、話も面白かったんですが、
それ以上に、普段の琴子の行動と思考が面白すぎる(笑)
第3話「電撃のピノッキオ、あるいは星に願いを」は、
夜の港町を、右手から電撃を出す木の人形が闊歩し海の魚を殺すという、
何じゃそりゃ?という話。
いちばんシリアスかつアクションがある話で、面白かった!中盤のアクセントです。
第4話「ギロチン三四郎」は、珍しく九郎のセリフが多い話。
ギロチンを所有していた老人の謎の行動を、
当のギロチン(付喪神)から相談されるって…。
殺人に関わる話なのに、ごもっともな突っ込みに思わず笑ってしまう、好きな作品。
第5話「幻の自販機」は、うどん作りにハマった化け狸が、
たまたま手に入れたうどん自販機を使って、
化け物しか入れない異空間でうどんを提供していた、
という設定がもう、どこから突っ込んだらいいのか!
さらには、そこに迷い込んだ殺人犯のアリバイを作ってしまって、てんやわんや。
よく、こんな話思いつくなぁ、と驚くばかり。
このエピソードでも、刑事を納得させる虚構の推理が活躍。
何じゃそりゃ?という状況を、何とまぁ!という虚構推理で打開する、
ハズレなしの短編集です。
2人の日常を楽しむ度:★★★
知恵の神・琴子と、異能の青年・九郎。
2人が普段どう付き合っているのか、どんな相談事を受けているのか、
気になる日常を堪能できる作品でした。
もう、普段の琴子のグイグイ押せ押せ方針が、笑えて笑えて…。
かと思えば、「秩序を守る」という信念は決して曲げず、
その姿は凛々しいけれども、やはり少し恐ろしい。ギャップが魅力的です。
琴子に対しての、九郎の遠慮のなさも描かれ、
「何やってるんだ普段(笑)」と突っ込みたくなるはず。
次作「虚構推理 スリーピング・マーダー」では、琴子の高校生時代のエピソードや、
六花さんの優雅なる?逃亡生活も描かれているので、
ファンになった人は、もうどんどん揃えるしかない!
読みやすい内容とボリュームだし、どの作品も驚きに満ちてクオリティが高いし、
おすすめのシリーズです。
嘘の推理で面白い、という驚異!
前作で衝撃を受けた方、短編集もインパクト大です。